法律では、ある土地に建物を建てる場合、その建物が敷地面積全体で占める割合を定めており、これを「建ぺい率」と呼ぶ*1。
これによって、敷地内に空き地が生み出され、そこが駐車場や庭などに利用されることになる。
こうした空き地は、通風の確保、防火、採光といったような良好な住環境をつくり出すいくつかの役割を持つ*2。
なお、他の記事で紹介した公開空地にも、同様の機能が備わっている。
(参照→公開空地や広場 1 - 空き地図鑑)
また、建ぺい率の他にも、いわゆる「日影規制」と呼ばれる規定により中高層の建物には高さ制限が設けられている*3。これは、隣接する別の建物への日照が一定時間以上遮られることがないようにするためである。
ここに載せた画像は、全て吉祥寺(東京都武蔵野市)の商店街で撮影した建物の隙間の風景である。「商業地域内」では建ぺい率は80%に制限されているが、条件によっては制限がかけられないこともある。
ここではビルの間の隙間はほとんどなく、空地が防火や日照確保の目的で設けられているようには見えないが、最低限の通風の確保にはなっているのだろう。
撮影していて気付いたのだが、これら5、60センチほどの隙間にも所々にきちんと扉が設けられていた。
また、路地の奥には建物の裏口やそこにつづく階段が見えたりして、子供の頃にこういう隙間を探険したのを思い出した。
吉祥寺は街としての人気が高く、華やかなイメージを持つ者が多いかもしれない。しかし当然のことながら、商店街を客として訪れる者とこの街で働いている者とでは、街のイメージは異なるだろう。
通りから隠された配管や換気扇、落書きされた壁や扉、ゴミ置き場、道具置き場…。
人々の目に留まりにくい隙間に、街の現実の一端が現れている。
(隙間の空地:上からno.44〜49 / 東京都武蔵野市 )
*1:建築基準法第53条に規定されている。敷地面積に対する建築面積の割合は、住居地域(「第一種住居地域」や「第一種低層住居専用地域」をはじめ様々にある。)や商業地域、工業地域などによって異なるが、それぞれ30〜80%の範囲内で定められている。しかし、条件によっては制限が設けられず、100%の割合で建てられる場合もある。(東京建築士会法規委員会編『2015年版 建築基準法規集』新日本法規出版、2014年、53〜56頁参照。)
*2:建ぺい率は通風・防火・採光の役割を持つと言えるが、それらを目的として設けられたとする公文書はまだ確認していない。
*3:建築基準法第56条の2「日影による中高層の建築物の高さの制限」による。(東京建築士会法規委員会編『2015年版 建築基準法規集』新日本法規出版、2014年、59〜60頁参照。)