空き地図鑑

空き地、更地、使われていない資材置き場、オープンスペース、祭祀場、住居跡地など、「空いている場所」がもつ様々な機能、意味、魅力を探ります。 (※本ブログに掲載の写真および文章の無断使用(転用・転載など)は禁止しています。)

建物跡地に残る郵便受け(無名の遺跡17)

 

前回の記事では、郵便受けだけがポツンと立っている印象的な姿の空き地を紹介した。

そこを訪れたのは今年の5月だが、実は先月訪れた二つの地区においても、それぞれ郵便受けが残る空き地に出会った。

3回連続で同じ特徴を持つ空き地に出会ったのは、今回が初めてだ。

もちろん、これまでも住宅跡地を訪れた際に、塀に郵便受けが付いているのを何度か見かけたことがある(上の写真)。

しかし、郵便受けが単体で残されている場所は珍しい。

この記事では、6月に訪れた「郵便受けが残る空き地」を2か所紹介したい。

 

郵便受けが残る空き地 1

旧市街で、過去の痕跡が残る空き地を見つけた。

敷地内でまず目についた痕跡は、南側の地面に残るコンクリート舗装部分だ(写真右側)。それ以外にも、この空き地には好奇心をそそられる不思議な痕跡がいくつも残っている。

この土地の過去の姿が気になったので、空中写真とGoogleマップ(ストリートビュー)を使って調べてみた。

すると、2008年の空中写真には農家らしき建物が写っていた。しかし、2014年5月のストリートビュー画像ではすでに建物が消え、空き地となっている*1

なお、2008年から2014年までの資料がないため正確な解体時期はわからない。

しかし、私が訪れたのは2026年6月。つまり、少なくとも12年以上は空き地の状態が続いていることになる。

敷地の北西の角には排水枡が地面から突き出ており、その上や隣地との境界に、合わせて7〜8枚のレンガが置かれていた。

現地では、建物の解体で出た残置物だと思っていた。しかし、帰宅後に2014年のストリートビューを確認したところ、当時はこの辺りに防草シートが敷かれており、その「重し」として使われていたことがわかった*2

敷地内の様子。

道路沿いにカーブミラーが立っている。これも調べてみると、建物があった時代から存在していたものではなく、建物解体後の2014年以降に設置されたことがわかった*3

敷地の南側は、このようにコンクリート舗装された状態で残っている。

しかし、舗装された部分はきれいな長方形ではなく、特徴的な形をしている。したがって、この舗装部分は将来再利用するために残したものではなく、たんに解体・撤去費用を抑えるために残したと考えられる。

南西角から見た舗装面の様子。

おそらくこの舗装部分は、かつて建物の表に接していたのだろう。玄関前で車の乗降をスムーズにしたり、駐車場として使ったりするために設けたものと考えられる。

なお、舗装面には、一か所だけ円形に抉り取られたような部分がある。

かつてここに立っていた建物は、空中写真を見る限り農家だったと考えられる。勝手な想像だが、かつてこの円形部分には水栓や流しが設けられていたか、あるいは大きな庭石が置かれていたのではないだろうか。

また、円形の痕跡のそばには、地中から配管が突き出ていた。これは、地下の雨水溝と、建物の雨樋を繋いでいた接続パイプだと推測できる。

そして、このコンクリート舗装された場所の隣には境界フェンスが立っており、そこに錆びた郵便受けがワイヤーで括り付けられていた。

郵便受けの撤去自体は簡単だと思われるが、なぜわざわざ残しているのだろうか?

これについては、記事の最後にじっくり考察したい。

南西角から見た空き地の全景。

(no.603 茨城県 撮影年月:2026年6月)



郵便受けが残る空き地 2

旧市街で出会った、自転車販売・修理店の跡地。
訪れた時点で、建物が解体されてから数ヶ月ほど経過している。

敷地は南北に細長く伸びており、写真の向かって左が北側、右が南側にあたる。

このうち、雑草が生えていない中央部分や、雑草が比較的少ない南端までの範囲が建物の跡地だ。

そして、雑草が多く茂っている北側(写真左側)は、かつて駐車場として利用されていたスペースである。

北側にある駐車場の跡地。

駐車場として使われていた当時も、地面は舗装されておらず砂利敷きだった。そのため、当時から生えていた雑草が今もそのまま残っている。

奥側(東隣)の土地との境には、境界標と見られる石杭が立っている。

だが、今後の除草管理が疎かになれば、すぐに草で隠れてしまうだろう。

敷地の北端に立つ塀沿いには、人工物がいくつか並んでいる。

これらが解体作業によって出たゴミなのか、それとも店の営業時からこの場所に置かれていたものなのかはわからない。

ドクダミに埋もれたプランターがある。

プラスチックケースや庭石と思われるものも置かれている。

そして、敷地の一番奥(北東角)の緑の中に、赤い郵便受けがポツンと置かれている。

郵便受けはプラスチック製で、特に固定されている様子もなく、コンクリートブロックの上にただ乗っているだけだ。

おそらく、もともと道路沿いの塀や建物の壁面に設置されていたのだろう。それが、建物の解体時に取り外され、この場所に置かれたと考えられる。

強風が吹けば簡単に飛ばされてしまいそうだが、まだ綺麗な状態で立っている。このことからも、解体されてからほとんど時間が経過していないことが窺える。

北西から見た空き地の全景。

(no.604 茨城県 撮影年月:2026年6月)

 

 

このように、前回の記事で紹介した空き地を含め、1ヶ月間で「郵便受けが残る空き地」に3か所も出会った。

建物がなくなった土地に、なぜ郵便受けが単体で残されているのだろうか?

これについて、下記の3つのケースを推測してみた。

 

ケース1:転送サービス補完のため。

引越し後も、一定期間は郵便局の転送サービスが利用できるが、利用対象外の配達物もある。それを受け取るために、あえて一定期間郵便受けを残しているケース。

 

ケース2:法人登記した住所を利用するため。

事業所の建物を解体した際に、登記上の住所は変更せず、しばらく空き地に郵便受けだけ残して郵便物を受け取れるようにしているケース*4

 

ケース3:処分保留のため残されている。

建物の所有者と連絡がつかないまま業者が解体を行なったところ、郵便受けの中に郵便物が残されていることがわかり、トラブル回避のために手をつけずに残しているケース。

郵便物は他者の所有物なので、第三者が勝手に廃棄すると刑事責任(信書隠匿罪など)に問われるリスクがある。通常は、残された郵便物を解体工事の発注者が保管したり、郵便局へ返却したりすると考えられるが、残置物の処分方法が明確でなかったために、そのまま残している可能性がある。

 

以上のように、3つのケースを推測してみた。

しかし、前回記事から紹介した3つの郵便受けが、それぞれどのケースに該当するかまではわからない。

ただし、本記事の最後(「郵便受けが残る空き地2」)で紹介した赤い郵便受けは、人目につきにくい敷地の最奥に置かれていた。その状態を考えると、ケース1ケース2のような目的ではなく、ケース3である可能性が高い。

いずれにしても、個人の引越しや事業所の移転、さらに「所有者不明土地」、「行政代執行」などの様々な事情によって、これらの不思議な景色が生み出されていると思われる。

 

*1:国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」(https://service.gsi.go.jp/map-photos/)の2008年、2024年の写真と、Google「Googleマップ」(https://www.google.com/maps)の2014年5月のストリートビュー画像を参照(ともに2026.7.25.閲覧)

*2:前掲、「Googleマップ」(https://www.google.com/maps)の2014年5月のストリートビュー画像を参照。(2026.7.25.閲覧)

*3:同上、「Googleマップ」2014年5月のストリートビュー画像(2026.7.25.閲覧)

*4:実際に次のような利用例がある。参照:モバイルホーム株式会社「土地だけの場所に郵便物は届くのかhttp://mobilehome.jp/2022/02/11/mails-can-be-delivered-to-land-only-location/(2026.7.25.閲覧)