神奈川県鎌倉市にある北条氏常盤亭跡は、鎌倉時代に北条一族の有力者が建てた別邸跡で、国の史跡に指定されている。
上の写真は、道路からみた別邸跡の一部である。
一見ただの空き地にしか見えないが、ここから何らかの遺構が見つかったと考えられる。
なお、この史跡の範囲は、上の写真に写っている場所だけでなく広範囲に渡る。
現地の標識によれば、史跡内からは法華堂跡や門柱跡とみられる遺構が見つかったようだ*1。
しかし、下の写真(入口付近から撮影)を見てもわかるように、内部には目につくものは何もなく、ただの空き地が広がっている。
特徴といえば、両側が崖になっており、その谷間に立地していることだけである。
上の写真を見れば、空き地がさらに奥へ続いているのがわかるだろう。
奥へ進んでいくと、下の写真のように樹々がまばらに生えた空き地にいたる。
入口から奥へ進むにつれて空き地の幅は狭くなり、両側の崖が近づいてくるため、この空き地の構造がV字型に先細りになっていることがわかる。
なお、さらに奥まで道が続いているが、その先は薮で行き止まりになっていた。
(no.78 北条氏常盤亭跡(地上部の空き地)/ 神奈川県鎌倉市)
また、写真では見えづらいが、冒頭の写真の右端には谷の上に続く道があり、そこを登っていくと下の写真の空き地にでる。
つまり、地上部の空き地とは別に、崖の上にもう一つ空き地が存在するのである。
そして、ここは「タチンダイ」と呼ばれる有力者の別邸跡である。
崖の上にある「タチンダイ」と呼ばれる空き地。登って来た方角から撮影。
反対側(やぐら側)から撮影。
(no.79 北条氏常盤亭跡(タチンダイ)/ 神奈川県鎌倉市)
ここも、一見しただけでは目につくものは何もないただの空き地である。しかし、おそらくここから、建物の基礎の痕跡などが見つかったのだろう。
「タチンダイ」のそばには、特徴的な形をした洞穴があった(下の写真)。
現地の標識には、「鎌倉時代ごろの墓所で、鎌倉周辺に多く見られる「やぐら」という岩窟も残されています」*2と記されている。
地上部の空き地も崖上にある「タチンダイ」も、ともに特徴的な地形にあるが、内部は何の変哲もない空き地である。
しかし、当時の時代背景や建物の知識があれば、これらの殺風景な空き地を鑑賞する際も、いくらか想像しやすくなるだろう。
ちなみに、訪れた際には人の姿はなくがらんとしていた。(入口で一人とすれ違ったくらいだ)
きっと、よほど歴史好きな人でなければ、「見どころ」のほとんどない空き地をわざわざ観光しに来ることはないのだろう。