空き地図鑑

空き地、更地、使われていない資材置き場、オープンスペース、祭祀場、住居跡地など、「空いている場所」がもつ様々な機能、意味、魅力を探ります。 (※本ブログに掲載の写真および文章の無断使用(転用・転載など)は禁止しています。)

北条氏常盤亭跡(ほうじょうしときわのていあと)

 

f:id:akichiniiko:20200606191659j:plain 神奈川県鎌倉市に北条氏常盤亭跡がある。ここは、鎌倉時代に北条一族の有力者が建てた別邸跡で国の史跡に指定されている。

上の写真は道路からみた別邸跡の一部である。f:id:akichiniiko:20200606192105j:plainそしてこれが柵の内側の様子。

このように空き地が広がっているが、史跡として指定された場所はここだけでなく、周囲の広い範囲に及ぶ。そして、この史跡内から法華堂跡や門柱跡とみられる遺構が見つかったようだ*1

しかし写真を見てもわかるように、内部には目につくものは何もない。特徴といえば両側が崖になっており、その谷間に立地していることだけである。

空き地は奥へ続いているので進んでみる。

f:id:akichiniiko:20200606192433j:plain途中で湿地っぽい一画があり、周囲と異なる植物が生えていた。

f:id:akichiniiko:20200606192445j:plainここには石が固まってあったが、まさか遺構ではないだろう。

f:id:akichiniiko:20160705200637j:plainさらに奥へ進むと、このように樹々がまばらに生えた場所にいたる。

入口付近に比べるとこの辺りの土地の横幅は狭く、両側の崖が近づいてくる。このことから、この空き地の構造はV字形に先細りになっていることがわかる。

なお、さらに奥まで道が続いているがその先は薮で行き止まりになっていた。 

f:id:akichiniiko:20200606192121j:plain一旦遺跡の入り口まで引き返してきた。

実はここには谷の上に続く道がある(写真右端)。そしてこの道を登ると、やがて「タチンダイ」と呼ばれる空き地にいたる。

f:id:akichiniiko:20200606191853j:plain崖の上にある「タチンダイ」と呼ばれる空き地。登って来たところから撮影。 

f:id:akichiniiko:20200606191907j:plain反対側(やぐら側)から撮影したタチンダイ。 

ここも、一見しただけでは目につくものは何もないただの空き地だ。しかし、おそらくここから建物の基礎の痕跡などが見つかったと考えられる。現地の標識には、ここが造成された場所であること、中世居館と関わりがあることなどが記されている*2

なお、「タチンダイ」のそばには特徴的な形をした洞穴があった(下の写真)。

標識には、「鎌倉時代ごろの墓所で、鎌倉周辺に多く見られる「やぐら」という岩窟も残されています。」*3と記されている。

 

f:id:akichiniiko:20160802213926j:plain

f:id:akichiniiko:20160802213845j:plain 

谷間にあった空き地と「タチンダイ」は、ともに特徴的な場所にある。しかし、どちらもその姿は何の変哲もない空き地である。

私は当時の北条一族や建築物についての知識がないため、ここでは現地の標識に記された情報だけを頼りに空き地を観賞した。しかし、もしそれらについて詳しい人であれば、この空き地の過去の姿を私より具体的にイメージできるのかもしれない。   

ちなみに、ここを訪れた際、史跡内は人気がなくガランとしていた。滞在していた間は、入口付近で一人とすれ違ったくらいだ。

やはり、見どころのほとんどない空き地をわざわざ観光しに来る者は少ないのだろう。

no.78 北条氏常盤亭跡(地上部の空き地)、no.79 北条氏常盤亭跡(タチンダイ)/ 神奈川県鎌倉市〉

 

*1:鎌倉市教育委員会が設置した現地標識による。

*2:「タチンダイ」付近に設置された鎌倉市教育委員会の標識による。

*3:同上、「タチンダイ」付近の標識による。