美大校舎裏の空き地
武蔵野美術大学の校舎裏に、人があまり立ち入らない空き地がある。
上の写真は、校舎階段(2号館)の踊り場から撮影したものだ。
学生時代、私は気が向いた時にここを訪れ、そのガランとした雰囲気を楽しんでいた。
近年、ここに工事関係事務所と思われるプレハブ小屋が建ってしまったが、基本的に学生や職員が往き来する場所ではなく、人気はほとんどない。
そして、下の写真は、校舎内からこの空き地へ向かう所の風景である。
こういう、暗がりから明るい所へ抜ける空間には、なぜか魅力を感じる。
空き地は広すぎず狭すぎず、適度な広さで居心地が良い。
敷地内は雑草が伸びてきていた。そして、端の方には三角コーンなどの工事道具やガラクタのようなものまで、色んなものが雑然と置かれていた。あたりは静かで、まさに「無用の空間」といった佇まいである。
冒頭の写真を撮った階段。
空き地には様々な物たちが放棄されていた。右側にあるブルーシートで包まれたものは壊れた作品か、あるいは作り損なった作品かもしれない。
踊り場の下にも、作品の素材らしき物が放置されていた。
制作を終えていらなくなった材料だろうか。
あるいは、いつか使おうと思った素材をここに置いておき、そのまま忘れ去られた可能性もある。
空き地は校舎の壁面に沿って奥へ続いており、隣の校舎(4号館)へと繋がっている。その途中にも、棄てられた段ボール箱があった。
おそらく彫刻学科の学生が置いたものだろう。箱には「馬あし用」の文字がみえ、素材と思しき垂木がたくさん入っている。作品が完成し、用済みになったものと思われる。
隣の校舎(4号館側)から見た様子。左側には下りの階段があり、この階段からも先と同じ校舎(2号館)へ入ることができる。
階段を下りた校舎風景。右側の階段を上がると再びさっきの空き地に出る。
この階段スペースも、ほとんど人が通らないし、落ち着いていて好きな場所である。
しかし、わざわざここに階段がつけられているということは、もともとこの空き地には利用目的があったのかもしれない。
下の写真のように、敷地の一部は板材が埋められデザインされている。(その上には用途不明の竹材、リヤカーが置かれている。)
つまり、ここは当初、憩いのオープンスペースとしてつくられた可能性がある。
このように、この空き地は美大らしく、生まれ損なった作品や壊れた作品と考えられるもの、そして作品制作の過程で出たゴミなどの行き場になっていた。また、一部ではあるが、将来使う予定の素材置き場としても機能しているようだった。
作品をつくる過程で、制作者は日々様々な形で素材と接することになる。
その中で、余った材料の処理に困った経験は誰しもあるだろう。
かさばるのでアトリエには置いておけない素材、捨てるには移動や解体が面倒な素材、今後何かに使えそうなのでとりあえず残しておきたい素材…。
それらのうちの一部がここに流れ着くのではないだろうか。こうして、物置き場ともゴミ置き場ともいえない変な空間が形成され、その「なんでも受け入れてくれそうな雰囲気」が魅力になっているのだと思う。
(※2019/11/21追記。上で紹介した空き地は2018年に撮影したものだが、その10年前に撮った画像を発見した(以下)。この頃、この空き地はさほど荒れておらず、楽園っぽい雰囲気があった。)
(no.239 東京都小平市)
高架下の閉鎖空間
吉祥寺駅近く、JR中央線の高架下に白い柵で囲まれた空きスペースがあった。
おそらく、高架の支柱と道路との間に、緩衝地として計画的に設けたのではないだろうか。その後、違法駐輪などを防ぐ目的で柵がつけられ、このような姿になったと考えられる。
(2021.6.6.追記:この空き地は、前を通る道路の幅員拡張予定地として確保されているのではないか、との指摘を読者の方からいただきました。調べたところ、ここは「3・4・13号井の頭本田線」にあたり、幅員16メートルが計画されてるようです*1。したがって、このような幅員拡張予定地の空き地は「開発や利用を待つ空き地」に分類できそうなので、今後同じような空き地を取り上げる際はカテゴリーの変更を検討したいと思います。)
なお、この付近の高架下の多くは有効活用されており、駐車場になっていたり、飲食店やドラッグストアなどが入っている。
この空きスペースの隣も店舗になっていて、写真左奥の黄色い柵付近が搬入口になっていた。(搬入口を挟んで、奥にも別の空きスペースがある。)
アスファルトの様子からして、スペース内は最近舗装されたみたいだ。
そして、そこにはキャスターと、なぜかコンクリートのかたまりが転がっていた。
キャスターは、店の搬入用台車から外れたものだと思う。
一方、この破片はどこから旅してきたのだろう。
廃棄物の運搬車が前の道を通過した際、荷台から落ちたものだろうか。
あるいは、遠くで何かの解体中に出たものが、遥々この近くまで転がってきて、最後に誰かがここに置いたのだろうか…。
反対側からの様子。
そして、奥にも別の空きスペースがあった。ここも、先のスペースと同時に整備されたと思われる。しかし、さっきのとは佇まいが違っていて、内部に生えている雑草や樹木が不思議な雰囲気を醸し出していた。
まず、この雑草。
アスファルトで舗装されているはずなのに、あまりに自然に生えていないだろうか。 コンクリートやアスファルトのひび割れから雑草が生えていることがある。
しかし、このように、あたかも土の地面のように生えている姿は初めてだ。
そして、もう一つ気になるのがこの観葉植物っぽい樹木である。なぜ、この一本だけここに残され保護されているのだろうか。
このスペースを整備する上で、この程度の大きさの木なら簡単に取り除けそうである。
ひょっとして、これは珍しい樹木なのだろうか。それとも、何かの記念で植えられたり、この場所にとって重要な意味があるものなのだろうか。
二つのスペースとも、よく見るとそれぞれ面白いものがある空き地だった。
(no.240 東京都武蔵野市)
三角形の空き地
このブログでもいくつか紹介してきた、街中でよく見かける三角形の空き地である。
この空き地は隣接する店の敷地のようだ。
今は使われていないが、きっと駐輪スペースや物置き場になることもあるだろう。
三角形の空き地が有効利用されるケースとして、野立て看板が立てられたり、駐車場や駐輪場になったり、自動販売機が置かれることがある。しかし、使い道がないくらい小さな空き地も多く存在する。
なお、このような余ってしまった場所のことを、残余氏氏は「残余地」と呼び、その魅力について数多く紹介している。
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-White/4339/rojyo-top.htm
(no.241 東京都武蔵野市)
同じく、住宅街にあった三角形の空き地。
空き地の中には水道メーターの蓋が見える。
そして、反対側には木製の柵が設けられていた。おそらく、これは公共物ではないだろう。
ということは、一応ここは隣家の敷地だろうか。しかし、外構は設けられていないし、庭として手入れされているようにも見えない。また、駐車場は別の場所にあった。
いずれにせよ、ここはまだ使い道がみつかっていない土地のようだ。
(no.242 茨城県龍ケ崎市)
赤い小門の前にあった意味ありげな空き地である。
地面が微妙に盛り上がっているのは、門から出入りしやすくするためだろうか。
ここが日常的に使われているかどうかわからないが、おそらく、玄関前で道路工事が行われた際に、ここが玄関の代わり(通用口)になると考えられる。
つまり、非常時のために設けられた空き地ということだろう。
(no.243 東京都渋谷区)
ここは武蔵小金井駅前の通りで、再開発が盛んな地域だ。
写真のように、道沿いには整備されたばかりのバス営業所(京王バス)があり、その土地と歩道との間に三角の空き地ができていた。
空き地の右下の角に境界標らしきものが見える。もしこれが境界標だとすれば、ここは京王バスの敷地内ということだろう。
いずれにせよ、ここは交通量の多い交差点なので、出会い頭の事故を防ぐための余白として設けられたと考えられる。
(no.244 東京都小金井市)
コンクリートブロックで囲われた極小の空き地があった。
建物の角への衝突を防ぐためにつくられたと考えられる。しかし、この周囲から浮いた姿によって、小さな隙間の存在も目立っていた。
なお、隙間の中は未確認である。
(no.245 東京都台東区)
この空き地を撮影しようとカメラを構えたら、近くのレストランの店員が黒板を置いていってしまった。
確かに、ちょうど看板が収まるスペースである。白黒ではなく、色が少しついていた方が目立ちそうだが。
裏側には花壇が置かれている。葉は青く、ちゃんと水やりなど手入れされているようだ。
こんなに小さなスペースが生かされているとは思わなかった。もともとは無用の場所だったかもしれないが、後から意味が与えられ魅力的な空間に変わったのだろう。
(no.246 東京都渋谷区)
(※2019.3.27.追記: 本記事を含め、これまで当ブログで紹介してきた三角形の空き地の中には「隅切り」とみられるものが多くあります。これらは行政の指導によってつくられるため、当ブログの中では【ルールによってつくられる空き地】に分類できそうです。(もちろん、単に使い道がなく【利用されていない土地】になっているものもあると思います。)次回以降、分類については修正していく予定です。)
*1:参照:武蔵野市公式ホームページhttp://www.city.musashino.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/010/818/2012-6.pdf2021.6.6.閲覧)