空き地図鑑

空き地、更地、使われていない資材置き場、オープンスペース、祭祀場、住居跡地など、「空いている場所」がもつ様々な機能、意味、魅力を探ります。 (※本ブログに掲載の写真および文章の無断使用(転用・転載など)は禁止しています。)

小禄の嶽(おろくのたき)

 

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ここは、那覇市小禄(おろく)の森口公園内にある聖域で、「小禄の嶽(おろくのたき)」とよばれている。

 

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森口公園は小高い丘にあり、公園入口から階段を登リ切ると、上のように開けた場所に出る。

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空き地の面積は広く、内部には小さな祠がたくさん並んでいた。

これまでに訪れた御嶽のほとんどは、一つのスペースに一つか二つの祠が置かれてあるだけだったのに対し、ここには10以上の祠が空き地の周囲を取り囲むように並べられていた。そのため、空き地の中は、なにか異様な雰囲気が漂っていた。

まるで、家の形をした祠の中から神さまたちがこちらを見ているような気がする。

公園とはいうものの、遊びにくるような雰囲気の場所ではない。街灯も見当たらなかったので、きっと夜になれば真っ暗だろう。

 

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撮影時には人が一人もおらず、途中から小雨も降ってきた。

また、この公園の別の場所には鬱蒼とした森があり、そこにも拝所が点在していた(下の写真)。

 

f:id:akichiniiko:20170519124240j:plain この空き地は最近は使われていないのかもしれない。

奥に祠があるが、内部は笹のような草で覆われており、足を踏み入れにくい環境だ。

 

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この空き地にも祠やイビ石のようなものが点在していた(中央から右側の木にかけて、根元辺り)。

このように、それぞれの祠の前には、拝むための場所として空き地が確保されているようだ。しかし、小さな祠や石があることに気付かなければ、ここが祭祀場だとは思わないだろう。

 

なお、那覇市に問い合わせたところ、森口公園内に設けられたこれらの拝所の中には、「ユタ」とよばれる沖縄の占い師が、個人的につくったものもあるようだ*1

「ユタ」とは古くから沖縄や奄美に存在する巫者であり、死者の供養などに携わっている人たちのことである*2

この森の奥にも拝所があったが、雨あしが強まってきたため撮影を中断することにした。

今回、雨の中、夕方一人で撮影していたからかもしれないが、この聖域全体に張りつめた空気があり、何となく長居しづらかった。

 

また、祠が点在する広い空き地の景観は珍しく、これからもずっと記憶に残りそうだ。

 

これまでに訪れた御嶽はまだ15ヵ所ほどだが、考えてみるとその多くが地上より標高の高い所に位置している。

斎場御嶽、友利御嶽、知念城近くの拝所、玉城の拝所、薮薩御嶽、クバの御嶽、首里城内の御嶽、そしてこの小禄の嶽などは、どこも小高い山や丘、崖の上に位置しており、海が望める所も多い。

このように、眺望(聖域内から見える景観)と祭祀の内容との関係についても、今後注目して調べてみたいと思う。

 

(冒頭:no.133 小禄の嶽公園の頂上部の空き地 / 沖縄県那覇市)

(後半2ヵ所 : no.134〜135 森口公園内の森付近の拝所  / 沖縄県那覇市)

 

*1:那覇市市民文化部文化財課提供の資料による。

*2:大島建彦、薗田稔、圭室文雄、山本節編『日本の神仏の辞典』、大修館書店、2002年(初版2001年)、「ユタ」1304〜1305頁参照。