沖縄県うるま市の浜比嘉島(はまひがじま)に、「東の御嶽(あがりのうたき)」がある。
ここは、大木の下にある空き地が聖域になっており、これまで訪れた御嶽の中でも印象深い場所だった。
訪れた日は、那覇市を出発し、浦添、宜野湾、沖縄市などいくつかの市町村を通過して約50㎞北東へ移動。
さらに、うるま市の南端付近にあるバス停で小型バスに乗り換え、島へと向かった。
浜比嘉島と沖縄本島は、海中道路や橋でつながっているため、船に乗る必要はない。
バスは2時間おきに出ていた。
ここから6キロほど海中道路と「浜比嘉大橋」を渡っていく。
「海中道路」といっても海中トンネルのことではなく、海の上を走る道路になっている。そのため、ここを通過する時は左右にきれいな海を見渡すことができた。
こうして海を渡り、浜比嘉島に入ると、間もなく道沿いに「東の御嶽」(シヌグ堂)の標識が見えた。
標識の脇には舗装されていない小道があり、薮の方へ続いている。
この先に御嶽があるようだ。
そのまま進んでいくと、行く手が薮に覆われていて行き止まりのようにも思えた。
しかし、道は一本なのでさらに奥へ分け入ってみる。
すると突然視界が開け、藪の中に隠されるように、ぽっかりと空き地が広がっていた。
内部は、大木(アコウ、もしくはガジュマル)が大きく枝を広げ、独特の空間を形づくっている。
ここが「東の御嶽(あがりのうたき)」である。
御嶽内には適度に隙間があり、海からの風がよく通りぬけていく。枝葉の隙間からは木漏れ日が差し込み、きれいな陰影を地表に落としていた。
しばらく居続けたくなるような心地よい空間だ。
入口にある市が設置した標識によれば、ここでは「シヌグ祭り」という時化(しけ)を祈願する珍しい祭りが行われてきたそうだ。
そのため、ここは別名「シヌグ堂」ともよばれている。
シヌグ堂は周囲を木々に囲まれ、鬱蒼として外からは見えにくい場所にある。
そのため、薮に覆われた外観を見た時には、まさか内部にこのような空間が広がっているとは思わなかった。
また、狭い小道を抜け、突然開けた場所に出る構造は訪れる人を驚かせる。
このような空間演出は、氷川女體神社の祭祀遺跡と類似している。
氷川女體神社磐船祭祭祀遺跡(ひかわにょたいじんじゃいわふねまつりさいしいせき) - 空き地図鑑
大木の根元には祠が設けられていた。
また、石がいくつかまとまって置かれている所もある(写真左手前)。
儀式の際には、この石の上で香を焚くのかもしれない。
御嶽の奥から木の裏側を撮影。(奥の明るい所が御嶽の入口)
ここからは、幹から垂れる迫力ある気根の姿が見られる。
現地の案内には記されていなかったが、この大木は「ご神木」のような存在なのかもしれない。 枝や根を一杯に張る姿から強い生命力を感じられた。
なお、この御嶽の奥には、さらに上の方へ続く細い階段があった。
そこを登っていくと、一畳ほどの狭いスペースに、家の形をしたコンクリート製の祠が置かれてあった。
そこは、なぜか強い畏怖の念を抱かせる場所だった。
そのため、そこにはあまり長居せず、挨拶を済ませこの聖域を後にした。
島はどこものどかな景色が広がっている。
写真右側の道沿いに並んでいるのは、おそらく防風林だろう。そして、その向こうには海が広がっている。
浜比嘉島はリゾート地としても人気が高いようだが、訪れた時は観光客の姿はほとんど見られなかった。
防風林の所々に、海へ出られる通路があった。
訪れたのは7月中旬だったが、浜辺には人がほとんどいない。
ゆっくりと砂浜を散歩することができた。
子供だけの遊泳は危険。大人でも自己責任で… という内容の看板があった。
沖縄には「ハブクラゲ」という危険生物がいるそうだ。
海を眺めたい人のためか、浜辺にはいくつか椅子が置かれていた。
橋を渡って島に入るとすぐに港があり、漁船がいくつも並んでいる。
もう夏休みに入っているのだろう。島の中学校もがらんとしていた。
(no.101 東の御嶽 / 沖縄県うるま市 浜比嘉島)