空き地図鑑

空き地、更地、使われていない資材置き場、オープンスペース、祭祀場、住居跡地など、「空いている場所」がもつ様々な機能、意味、魅力を探ります。 (※本ブログに掲載の写真および文章の無断使用(転用・転載など)は禁止しています。)

無名の遺跡 2 店の跡地 / スポーツ広場跡地

 

前回の記事では、過去の痕跡を残す空き地として住宅跡地などを紹介した。

この記事では、飲食店の跡地包装用品店の跡地スポーツ広場らしき跡地を紹介したい。

「過去の痕跡を残す空き地」は特に珍しいものではなく、どの地域でも見られるありふれたものだ。

これらの空き地で目を引く物と言えば、塀の一部や建物の基礎などの僅かな残滓のみである。そのため、一般的に、その姿を観賞しようとする気持ちは起きないかもしれない。けれど、過去にあったものの気配が感じられるところにこの種の空き地の特色があり、不思議と惹きつけられる。この記事ではわずか3か所だけだが、その姿を記録しておきたい。

なお、ここで紹介する2つの店舗跡地は、旧市街地とその付近で見つけたものになる。このエリアは、古くから市内における商業の中心地として栄えていたが、2015年から2045年にかけて人口減少率が最も大きく見込まれており*1、すでにシャッターを下ろした商店や事務所を多く見かける。この2つの店舗跡地も、こうした動向の中で生まれた空き地と考えられ(どちらも2年以上前に閉店したと見られる。)、最近のコロナ禍の影響は無関係と見られることを付け加えておきたい。 

  

 

飲食店の跡地

f:id:akichiniiko:20200713210714j:plain県道沿いに飲食店の跡地(出入口部分)があった。

これは2020年6月に撮影したものだが、すでに閉店から1年半ほど経過している*2

f:id:akichiniiko:20200713210749j:plainアスファルトの隙間から伸びる雑草が、人が立ち去ってからの時間の経過を物語っている。

写真の両端に笹が伸びているが、これらは自生したのではなく、開店時に植えられたものに思える。

f:id:akichiniiko:20200713210756j:plain敷地内の様子。

駐車場を含め、面積は500坪ほどある。右奥に見える白いコンクリート部分が建物が立っていた場所だろう。

f:id:akichiniiko:20200713211323j:plain階段が残されている。ここが建物の出入口だったようだ。

f:id:akichiniiko:20200713210900j:plain出入口跡を離れて道沿いを進むと、建物の基礎部分が広がっている。  

f:id:akichiniiko:20200713211341j:plainこの辺りには建物を照らすライトが残されていたり、

f:id:akichiniiko:20200713211455j:plainポール看板の土台や…

f:id:akichiniiko:20200713211510j:plain垂れ幕広告の重しのようなものが放置されている。

f:id:akichiniiko:20200713211413j:plainまた、敷地の奥の駐車場には、照明灯が寂しげに立っている。

f:id:akichiniiko:20210228214658j:plainそして、建物の基礎の脇には、小さいコンクリートの土台もあった。ストリートビューで過去の様子を調べたところ、これは受水槽の土台だとわかった。


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 離れて見た建物の基礎。その周りは全て駐車スペースである。

f:id:akichiniiko:20200713211140j:plain建物の基礎(左奥)から離れ、さらに道沿いを進む。この辺りにも4、5台が停められる駐車スペースがある。

f:id:akichiniiko:20200713211104j:plain敷地の端辺りから見た、土地の全体像。

f:id:akichiniiko:20200713211710j:plain敷地の一番端に立つ照明灯。 

f:id:akichiniiko:20200713211242j:plain照明灯の後ろにある1台分の駐車スペース。ここが敷地の最端になる。

車止めの石が見えるが、ほとんど草に埋もれてしまっている。

 (no.407 茨城県)

 

 

包装用品店の跡地

f:id:akichiniiko:20201230220611j:plainこれは旧市街地にある包装用品店の跡地。2020年4月に撮影した。

建物が解体された正確な時期はわからないが、ストリートビューに写っていた2014年、2017年、2019年6月の画像を確認したところ、全てシャッターが下りていて営業している様子はなかった。つまり、閉店は6年以上前で、建物が解体されたのは2019年後半から2020年初めの間と考えられる。 

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奥行きは30メートルくらいある。手前には店舗、奥には居住用の建物があったのかもしれない。


f:id:akichiniiko:20201230215720j:plain奥のスペースには何故かたくさん雑草が生えている。基礎にひびなどが多く入っているからだろう。つまり、奥に建っていた建物は手前のものよりも古かった可能性がある。

f:id:akichiniiko:20201230220059j:plain 基礎には仕切られた痕跡が残っていて、間取りがいくらか想像できる。

(no.408 茨城県)

 

 

 スポーツ広場跡地

f:id:akichiniiko:20201230220749j:plainY字路にある、公園のような佇まいの不思議な空き地。

まずは向かって左側の道沿いから様子を眺めてみる。

f:id:akichiniiko:20201230222012j:plain敷地内は道路よりも高くなっていて、ブロック塀で囲われている。

f:id:akichiniiko:20201230222028j:plainここには不法投棄防止の看板が立っている。きっと、長い間この土地は使われていないのだろう。

f:id:akichiniiko:20201230221104j:plainこの空き地の特徴は、桜の木が道に沿っていくつも植えられていることだ。初めてこの様子を見た時、ここは公園だと勘違いしてしまった。

後日、ストリートビューにある過去の画像(2014年)を確認してみたところ、敷地の奥に砂で整地されたゲートボールコート(またはグランドゴルフコート)と見られるものが写されており、そばにはベンチ数台と倉庫の姿があった。

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このブログでは、上の写真のように住宅街にあるゲートボール場を紹介したことがある。そこはほとんど整備されておらず、宅地をそのまま「ゲートボール場」と呼んでいるだけに見えた。これと同じように、桜の木が立つこの空き地も、元々は地域の人たちが集う共有地だったかもしれない。あるいは他の可能性もある。実はこの空き地の隣には工場があるので、そこで働く従業員用のスポーツ広場とも考えられる。

どちらにせよ、今はベンチや倉庫などの設備は撤去され、使われなくなってしまったようだ。

f:id:akichiniiko:20201230220908j:plain道沿いを進みながら眺めているが、敷地内には特に目につくものはない。 

f:id:akichiniiko:20201230222048j:plain唯一目に留まったのは、奥の隣地との境界に設けられた段々の塀。

f:id:akichiniiko:20201230220831j:plainスタート地点(右奥)を振り返った様子。ここが敷地の端になる。

再びスタート地点に戻り、今度は反対側の道沿いを観てみる。 

f:id:akichiniiko:20201230221937j:plainなお、このスタート地点の角にはコンクリートの台が残されている。

f:id:akichiniiko:20201230221604j:plain裏側から見た様子。 標識がないので何かわからないが、役目を終えた防火水槽だろうか。

f:id:akichiniiko:20201230221619j:plainこの道沿いにも桜の木が並んでいる。 

f:id:akichiniiko:20201230221456j:plainここには車両が通れる入口があった。見えにくいが、細い鎖が張られ、脇にある支柱には鍵もついていた。

f:id:akichiniiko:20201230221831j:plain入り口の脇にある支柱。

f:id:akichiniiko:20201230221443j:plain 道沿いを奥に進む。この辺りは金属製の支柱が立ち、布のロープが張ってある。

f:id:akichiniiko:20201230222722j:plainこの場所にだけシュロが立っていた。自生したものだろうか。

f:id:akichiniiko:20201230221735j:plainシュロのそばには、廃材と思しき朽ちた丸太が放置されている。

f:id:akichiniiko:20201230221303j:plain敷地の端まで来た。奥が見通せるが、草に覆われゲートボール場の面影はない。 

f:id:akichiniiko:20201230221711j:plain 敷地の隅。特徴的な段々の壁が目に付く。そばには野立て看板のフレームも残されている。

f:id:akichiniiko:20201230221319j:plain端から振り返った様子。

春になれば、きっと満開の桜に囲われた空き地の姿が見られるのだろう。

 (no.409 茨城県)

 

*1:参照:龍ケ崎市ホームページ「龍ケ崎市まちなか再生プラン(案)」(パブリックコメント閲覧用)https://www.city.ryugasaki.ibaraki.jp/shisei/koho/public_comments/pubcomm-syuryo/01085944116.files/matinakasaiseipurannan.pdf (2021.2.26.閲覧)

*2:閉店日は2019年1月。参照:「食べログ」https://tabelog.com/ibaraki/A0803/A080302/8019609/(2021.2.2.閲覧)