街を散歩している時、多くの人にとって空き地そのものの印象はほとんど記憶に残らないかもしれない。
ただ、空き地(ここでは「利用されてない土地」の意味) の多い少ないが街の印象を左右することは確かだと思う。
個人的には、たとえ庭付きの住宅や公園などの緑が多い街であっても、空き地の数が少ないと息苦しさを感じることがある。
また、たとえ空き地が多い地域であっても、古い建物や空き家が多い街では侘しさを感じることが多い。
かつて東北や北関東の旧市街を歩いた時は、淋しい佇まいの空き地に多く出会った。
そこでは、空き地が街の衰退を表す存在だったのだろう。
一方、原野が切り拓かれて開発が進む地域では、空き地の数が多くても街に明るい印象を抱くことがある。この場合は、街が成長するための余白として空き地を眺めているのだと思う。
このように空き地に注目しながら散歩すると、空き地が街全体の印象を形づくっていることや、街の盛衰が個々の空き地の佇まいに影響を与えていることに気づく。
ここでは、長い間人の手が入っていないように見える空き地、すぐ開発できるようにきれいに管理されている空き地、開発中の空き地などの印象が異なる空き地をいくつか紹介したい。
この空き地は、おそらく使われなくなった市民農園だろう。
整えられた住宅街の中に、このようにぽっかりと人の手が入っていない領域がある。それだけで、この空間が何か特別な場所に思えてしまう。
フェンスなどで遮られているせいだろうか、他の場所で見るよりも雑草の緑がきれいに感じた。
端から見た全体像。
ここが入り口のようだ。
右奥にあるのは、おそらく雑草のヨウシュヤマゴボウだろう。敷地の全てが雑草で覆われているように見えるが、なかには野生化した野菜が生えているかもしれない。
よく見ると、ヨウシュヤマゴボウの草陰に水道の蛇口が隠れていた。
水道の痕跡はフェンスの近くにもあった。
雑草の楽園と化した、美しい緑の領域。
空き看板。ここにはかつてどんな案内が載っていたのだろう。
(no.302 東京都)
これも住宅街の角地にあった空き地である。白い砂利が敷かれスッキリ見えるところが特徴だ。
ここは、少なくとも15年以上空き地のまま残されていることがわかった*1。
もともと土の地面だったが、8年くらい前から砂利が敷かれ、それからほとんど姿が変わっていないようだ*2。砂利を敷いたとしても、放っておけば雑草が生えてきそうだが、内部にはほとんど草は生えていない。厚く敷いたのだろうか。
よく見ると、空き地と側溝の境界にレンガが埋まっていた。
ということは、昔は住宅など何かの建物が建っていたのかもしれない。
(no.303 茨城県)
これもまた、角地にあった空き地である。
ここも、一見したところ長い間放置されているように見える。
痛んだアスファルトの隙間から雑草が生えていた。
黄色いボールや片っぽの靴は、どこから旅をしてきたのだろうか。
(no.304 東京都)
住宅街に細長い空き地があった。はじめは隣の家の敷地かと思ったが、似たような空き地が不動産屋のホームページに載っているのを見たことがある。
ここもおそらく独立した区画であり、売地なのだろう。
なお、これよりも幅が狭くて細長い空き地を見かけたことがある。そこはデッドスペースになっていたようだったが、この空き地はそれなりに幅があるので、駐車場付きの狭小住宅が建てられそうだ。
(no.305 千葉県)
これも細長い空き地だが、さっきの空き地よりも横幅がある。いずれ隣のような家が建つのだろう。
また、手前の地面には茶色く錆びた水道メーターボックスらしきものがあった。したがって、ここにはかつて家が建っていたのかもしれない。
(no.306 千葉県)
雑草に覆われてしまった空き地。
使われなくなってどれくらい時間が経過しているのだろうか。
見切れているが、写真の左側には玉川上水が流れており、それに沿って道が伸びている。そして、右側の道の先は行き止まり(住宅)である。
敷地の左の塀には「林木材… 駐車場」と書かれた看板が置かれていた。しかし、周囲には製材所らしきものは見当たらなかった。
(no.307 東京都)
やや広めの空き地である。
かつてここには家が数軒建っていたのではないだろうか。左側には砂利の道が通っているが、その手前には舗装された部分が残されている。家の解体とともに、この道の大部分も解体されてしまったと考えられる。
地表に生えている雑草は、まだそれほど多くはない。ここにかつて家が建っていたとすれば、解体されてからさほど時間は経っていないだろう。
奥に続く空き地。水道メーターボックスの位置で大体の区画がわかる。
一番手前にあったメーターボックス。隣には古い仕切弁がある。
隣には何故かスリッパが落ちていた。
(no.308 東京都)
開発工事が始まったばかりの空き地である。家(庭、駐車場付き)が8軒くらい建てられそうな広さがある。
ストリートビューで過去の様子を調べてみたら、この空き地にはかつて小さな平屋が10軒ほど建っていたことがわかった。
敷地の一部には砂利が入っていた。
工事車両が作業しやすいように、ぬかるみ防止の目的で入れられたのだろうか。
空き地の中央付近の区画。ここは整地作業を終えたように見える。
地面には作業の跡が複雑な模様となって現れていた。こういう土の質感や凹凸は、いつまでも眺めていられる。
さらに隣の区画。奥に行くほど工事が進んでいるのがわかる。
入口に砂利のスロープがつくられていた。この区画では、間も無く建物の基礎が造られるのだろう。
そして、最奥の区画ではすでに建物の基礎らしきものができていた。周りの瓦礫が気になるが、一体なんだろうか。
(no.309 茨城県)
ここも家が2軒くらい建てられそうな、やや広めの空き地だ。
左隣の区画では工事が行われていた。何かの施設をつくるようだ。
敷地の奥は集合住宅に接しており、道路には接していない。したがって、ここに何軒か家を建てるなら、敷地内に新たに道が敷かれることになるだろう。
また、ここは住宅街だが道沿いには自動車販売店、パチンコ店、会社倉庫などもある。
ここも、ひょっとしたら何かの店や倉庫になるかもしれない。
(no.310 茨城県)
この地区は人口が増加傾向にあり、今も所々で新しい家が建てられている。
また、この空き地がある道沿いには一軒家が多いが、カフェや料理屋などの飲食店もある(ここの左隣もカフェである)。120坪くらいある土地なので、個人住宅を建てるなら広い庭と駐車場が確保できるだろう。
(no.311 茨城県)
これも、さっきの空き地のそばにあった空き地である。
ここには売地の看板が立っていた。
近寄ってみると国有地だった。
この地区は、1970年代後半から1980年代初頭に開発された竜ヶ崎ニュータウンの一部である。茨城県龍ケ崎市の総人口は2015年をピークに減少が進んでいるが、人口推計では、この地区の人口は将来的に増加すると予測されている*3。
内部は雑草が刈り取られ、管理がよく行き届いている。しかし、ここはゴミ集積所に接した角地なので、買い手がつきにくいのではないだろうか。
(no.312 茨城県)
この空き地には、ショベルカーを中心に円形がつくられていた。
車体が雑草に埋もれないように円をつくったのだろうか。それとも、単に何かの工事を中断しているだけなのだろうか。工事車両置き場なのか、開発中の空き地なのかよくわからない場所である。
(no.313 茨城県)
これは、ショベルカーの空き地の隣にあったもう一つの空き地である。
周りが樹木で囲われているし、ここは宅地というよりも使われていない畑に思える。
地表の雑草は少ないので最近まで使われていたか、あるいはこれから使う予定で除草したばかりではないだろうか。
(no.314 茨城県)
売地ではなく貸地のようだ。
左の看板にあるように、この辺りは宅地開発が盛んな地域である。また、ここは交通量の多い県道沿いにあり、スーパーマーケット、レストラン、カフェ、衣料品店、洋菓子店、ホームセンターなどが立ち並んでいる。
この空き地はそれほど広くはないが、将来何かの店ができるかもしれない。
(no.315 茨城県)
*1:Google Earth Pro(構築日2019年3月5日) の過去のイメージを参照。
*2:同上。
*3:「龍ケ崎市人口ビジョン」茨城県龍ケ崎市、2015年12月。https://www.city.ryugasaki.ibaraki.jp/shisei/machi-hito/2015101600125.files/vision_all.pdf