空き地には文化的な役割を担っているものがある。
それらを、ここでは「聖域の空き地」と「文化財の空き地」の二つに分類してみたい。
「聖域の空き地」とは、ここではおもに祭祀場として使われている空き地を指す。
「祭祀場」とは、神や祖先の霊などの聖なる存在に対して、祈りを捧げるために設けられた場所である。
祭祀や祭典を行なうための施設は、宗教や時代によって様々なものがある。
仏教やヒンズー教の寺院、神道の神社、キリスト教の教会、イスラム教のモスクなどの建築物は、そこでいくつかの重要な宗教的儀式を行う場として利用されており、清浄な空間として俗界から区別されている。
これらの宗教施設の多くは、屋外空間と屋内空間の両者を含んでいる。しかし、ここでは、現在も利用されている、あるいは、利用された歴史を持つ特徴的な屋外空間の祭祀場(空き地)のみを紹介したい。
また、「文化財の空き地」とは、正確には記念物の空き地のことである。
「記念物」とは文化財の分類項目の一つとして法律で定められており、城跡や住居跡などの遺跡、動植物や地質鉱物などの自然物、庭園や山岳、海浜といった名勝地の中で、とりわけ価値が高いものを指す言葉である*1。
この分類では、史跡として国や地方公共団体に保護されている場所を中心に紹介していきたい。
なおここで分類する聖域の空き地の中には、記念物に当てはまるものもいくつか存在する。しかし、この場合は、聖域としての性格を優先させ、文化財の空き地の中で再度紹介はしないつもりである。
*1:文化財保護法(昭和二十五年五月三十日法律第二百十四号)の第二条第一項第四号に記されている。参照:e-Govウェブサイト 「文化財保護法」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO214.html