「緩衝緑地(かんしょうりょくち)」は、騒音、振動、大気汚染、悪臭などを緩和したり、防止することを目的として設けられる空地*1で、工業地帯、工場、空港などの近くに設けられる。
緩衝緑地は都市公園の一つに分類されており、都市公園法にもとづいて設置されている*2。
また、「緩衝緑地」とはべつに、工場立地法*3により、一定規模を超える工場の敷地内につくられる緑地もある*4。
「緩衝緑地」は国や地方公共団体が設置しているが、工場立地法によってつくられる緑地は、その工場の設立者(私企業)によって工場の敷地内に設けられている。なかには、この緑地を一般に開放している所もあり、地域への貢献度の高さが評価されている*5。
写真は、東京都目黒区にある清掃工場の前につくられた緩衝緑地である。(写真奥の突き当たりに清掃工場の壁がある。)
ここは、公園のように一般に開放されており、撮影時には犬を散歩させていたり、子供たちが遊び場に使っていたりしていた。
このような緑の空間が工場沿いに広がる。
ちょっとした広場や遊具が設置されている所もある。多くの樹木が植えられているが、写真奥には工場の高い塀が築かれ、上を見上げると巨大な煙突が立っているのが見えた(下の写真)。
通りからみた外観。工場沿いに細長く伸びる緑地。
また、写真には写っていないが、緩衝緑地から道路を挟んで手前側に住宅街が広がっている。
このように、この緑の空地(くうち)は、工場と住宅街の間にクッションとして設けられている。こうして、工場から発生する悪臭や騒音を和らげ、付近の住環境を良好に保つ役割を果たしているのである。
また、それだけでなく、隣接する住宅街から工場を見えにくくし、景観を良くする効果もあると思われる。
(no.41 目黒清掃工場緩衝緑地 / 東京都目黒区*6)
*1:出典:国土交通省ホームページ「都市公園 都市公園の種類 公園とみどり」http://www.mlit.go.jp/crd/park/shisaku/p_toshi/syurui/
*2:緩衝緑地は、都市公園の「緩衝緑地等」に分類されている(前掲、国土交通省ホームページ「都市公園 都市公園の種類 公園とみどり」http://www.mlit.go.jp/crd/park/shisaku/p_toshi/syurui/)。都市公園法第二条の二には、「都市公園は、次条の規定によりその管理をすることとなる者が、当該都市公園の供用を開始するに当たり都市公園の区域その他政令で定める事項を公告することにより設置されるものとする。」と記されている(出典:e-Govウェブサイト「都市公園法」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S31/S31HO079.html)。
1968年から国庫補助を行なって緩衝緑地の整備事業が推進されている。『昭和48年版 環境白書』には、公害防止事業団(現在の環境事業団)が都市計画法に基づいて緩衝緑地を施工し、完成後は地方公共団体に譲り渡され「都市公園として設置、管理される」ことが記されている(出典:環境省ホームページ 『昭和48年版 環境白書』「第6章 環境保全関係公共事業の推進 第3節 その他の環境保全関係公共事業」(https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun.php3?kid=148&bflg=1&serial=1336)。
*3:昭和三十四年三月二十日法律第二十四号
*4:参考:経済産業省ウェブサイト
「工場立地法の概要 I.工場立地法の概要、役割 (2) 工場立地法の規制内容」http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004651/h15/pdf/g30911b01j.pdf
*5:例えば、次のような工場がある→ 出典: 九州経済産業局ウェブサイト「平成25年度緑化優良工場等九州経済産業局長賞を受賞!」http://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/ricchi/oshirase131122.html
*6:訪れた際、この緩衝緑地内では撮影が禁止されていたため、写真は公道から撮影した。