植物を育てるためには、日々の水やり、雑草とり、肥料管理、剪定などが必要で、何かと手間がかかる。
はじめは愛着を持って育てられていた植物でも、管理が面倒になったり、飽きられたりして、いつの間にか放って置かれてしまうケースがある。また、管理者の想定を超えて成長し過ぎた結果、厄介者扱いされて取り除かれてしまう場合もあるだろう。
この記事では、路上で見られる植栽地のうち、何らかの理由で植物が取り除かれ、使われなくなってしまったものを紹介したい。
紹介する中には、長い間放置されているようなところもあるし、短期間だけ使われていないものもある。その多くは誰からも見向きもされず寂しい佇まいをしているが、なかには自然に根付いた雑草が青々と茂り、魅力的な景色が形づくられていることもある。
雑草の箱庭
これは集合住宅(一階は店舗とみられる)の出入り口にあった花壇。
わずか30×100センチほどの小さな"空き地"だが、この限られた範囲に様々な雑草が生えており、箱庭的な魅力を感じる。
生えているのは、カタバミとアカカタバミが多く、緑色の草はハルジオンとスズメノカタビラと思われる。また、花壇の端には、かつて使われていたミニ柵が放置されており、哀愁を感じさせる。
(no.229 東京都小金井市)
高級雑草花壇
百貨店の前にある使われなくなった植樹スペース。
これを撮影したのは2018年12月。その時点で、使われなくなってから半年くらいは経過していた。
はじめは草がわずかしか生えていなかったが、撮影時は区画いっぱいに繁殖していた。
高級感漂う黒の大理石のおかげで、緑が映えて美しい。
初めてこれを見つけた時は、ここで越冬可能な園芸種を育てているのかと思った。しかし、後日図鑑で調べたところ、薄緑色の草はノヂシャ(野萵苣:欧米ではサラダにして食べる。)と呼ばれる帰化植物と見られ、少し大きくて濃い色の草は、ウラジロチチコグサ(または春の七草にも使われるハハコグサ)と思われた。つまり、どちらもいわゆる"雑草"のようだ。
(no.230 東京都武蔵野市)
使われなくなった植樹桝(しょくじゅます)
街路樹が切られ、放って置かれた植樹桝があった。ちなみに2つとも姿はそっくりだが別のものである。
もともと、ここにはハナミズキが植えられていたらしい。
いずれ新しい樹木に植え替えられる可能性もあるが、下の写真のように、不要と判断されればアスファルトなどで桝そのものが塗り潰されてしまうこともある。
塞がれてしまった植樹桝の痕跡。樹木が生えていた歴史を想像すると胸にくるものがあるが、スッキリと塗りつぶされた姿には美しさを感じる。
(no.231〜232 茨城県龍ケ崎市)
寂しい佇まいの空き花壇
歩道上で見つけた使われていない花壇(または植樹スペース)。
もう少し雑草が繁生していれば箱庭的な面白さを感じられるかもしれないが、これは土の部分が多く寂しい佇まい。
少し不思議なのは、この歩道上にある他の花壇は使われているのに、なぜかこの花壇だけ空いていることだ。
空き花壇のある歩道の様子。街路樹が植えられた花壇が連なって存在する。
(no.233 茨城県龍ケ崎市)
コンビニと歩道の境界に設けられた植栽地。
同じ道沿いにある植栽地にはツツジらしき低木が植えられているので、おそらくここにも同じものが植えられていたのだろう。長い間使われずにデッドスペース化しているように見える。
しかし、歩行者にしてみれば、ここに何もない方がコンビニに入りやすいのだろう。
こうして考えると、ここにあった植物は自然に枯れて無くなったのではなく、意図的に取り除かれたとも考えられる。
(no.234 東京都小金井市)
不動産会社の店舗前にあった使われていない花壇。ここも枯れ草ばかりで侘しい雰囲気だった。花壇のつくりとしては建物外壁に合う色のレンガが使われていて、こだわりが感じられる。
店の外観は趣向を凝らしている。花壇は対になって奥にもあり、そこは撮影時も使われているようだった。
(no.235 東京都小金井市)
これは、集合住宅の入口付近にあった花壇らしきスペース。
個人的には、この記事の中で最も侘しい雰囲気の「空き植栽地」だ。園芸用土が入っているが植物は何も植えられていない。
風に運ばれてきたのか、それとも上の階から落ちてきたものか不明だが、花壇には無関係な「避難器具」の標識がある。
また、犬の散歩マナーに関するパネルも置かれているが、たしかにこの植栽地のサイズや形は犬猫トイレトレーとほぼ同じである。
夜だったので確認しづらかったが、よく見ると木の切り株のようなものがあった。太さからすると、2、3メートルくらいの低木が生えていたのだろう。
ここは建物の入口なので、成長した木が邪魔になり切られてしまったのかもしれない。
(no.236 東京都台東区)
工事ネットサークル
芝生エリアが工事ネットで円状に囲われていた。
この公園は、週末になると近くの集合住宅に住む親子連れが多く利用して賑やかになる。
おそらく、この辺りの芝生は長い間人に踏まれて傷んでしまったため、植え替え工事が必要になったと考えられる。
あるいは、このスペースは設計し直され、新たに草木が植えられたり、遊具が設置されるのかもしれない。
あらためて遠くから眺めてみると、不思議なインパクトがある。個人的には、ストーンサークルや、神事を行う結界された土地のことなどを連想してしまう。
(no.237 東京都小金井市)
駅前ロータリーの空き花壇
巣鴨駅前のロータリーにあった使われていない花壇。
大きな円形の植栽地で、敷地内には芝生が植えられている。ただ、この中に3つの小さな円型花壇が存在しており、初夏(6月)に訪れた際は何にも使われていなかった。これから真夏に向かうので一時的に園芸活動を休んでいるのかもしれない。
花壇の管理は、巣鴨一丁目花を愛する会 の皆さんが行っているらしい。
一つ目の使われていない円型花壇。雑草がけっこう生えている。
二つ目の花壇。こちらは草は少ない。
そして、三つ目の花壇は防火水槽と一体化していた。
植栽地の中には、町会や商店会などによるクリーン運動予定表や...
散水栓とホースが備えられていた。
この植栽地は管理者が公開されており、常にきれいに維持管理されている。
訪れた時は一時的な「空き植栽地」だったが、栽培中の様子が想像できる場所だった。
(no. 238 東京都豊島区)
余った土地の農地利用
記事の最後に、「利用されている植栽地」であるものの、魅力的な姿の土地を紹介したい。
ここは現在、駐車場として使われている土地だが、上の写真のとおり、門扉や外構の一部が残されており、もともとは家が建っていたと推測できる。(現在は門扉を中心に、左右の土地とも駐車場)。
そして、この門扉の奥に細長い通路状の植栽地が伸びている。
おそらくこの通路部分には、かつて家が立っていたか庭があったと考えられるが、駐車場をつくった過程で余ってしまったようだ。
見えづらいが、地面には植物の芽が出ていた。
なお、写真の上(奥)の方にも通路状の土の地面が続いており、そこには成長した何らかの作物が生えている。
そして、これは1ヶ月後の様子。だいぶ芽が成長している。
ここに植えられている植物が何かはわからない。ただ、おそらく観賞用の草花ではなく、奥の畑と同様に野菜を育てていると思われる。
駐車場の奥ではトウモロコシが栽培されていた。
門扉が残された景観といい、細長い姿といい、余ってしまった狭小地の面白い利用例だった。
(千葉県)