吉祥寺駅から徒歩10分くらいの場所に、井の頭自然文化園がある。
この公園は、動物園と水生物園に分かれていて、規模は小さいながらも落ち着いた雰囲気があり、人気が高い。
大型の動物は少ないが、リス、アライグマ、フェネック、ヤマネコ、鹿などが見られるほか、子供が楽しめる小さな遊園地も併設されている。
この動物園の中をまわっていた時、偶然に上のような空き地を発見した。(※2012年5月撮影)
もっと色々な角度から撮っておけば良かったのだが、この時は電池切れ&予備バッテリー忘れのため、これだけになってしまった。
しかし後日(2012年12月)、気になったので、もう一度この空き地を訪れてみた。
すると…、
再開発工事が行われていた。
空き地の3分の2くらいは土が掘り起こされている。まだ工事は始まったばかりなのだろう。
ここで、たまたま職員の方が通りかかったので、この空き地について聞いてみた。
話によれば、ここはかつてラクダの飼育スペースとして使われていたという。
その後、この空き地は自由に行き来できる原っぱとして開放されるようになり、今後は新たに庭園をつくる予定だという話だった。
冒頭の空き地を見ればわかるとおり、入口には丸太が置かれ、低木も植えられている。これはおそらくラクダが飼育されていた時代の名残りだろう。
しかし、もう一つこの空き地で気になるところがある。
空き地のまわりを謎の板が取り囲んでいるのだ。
一見、天然ぽさにこだわった木の柵に見える。
しかし、よく見ると木には何か文字が書かれている。
これについて聞いてみると、野口雨情の詩だという。
野口雨情の詩に囲まれた原っぱ…。ラクダスペース時代の遺物と相まって、不思議なインスタレーション作品が一時期ここに展開していたのである。おそらくこんな空き地は他にないだろう。
ここは、人通りの少ない場所にあり、オープンスペースとしての利用を促す標識もない。また、人々の利用のため、原っぱとして開放しているという話だったが、実質的にはデッドスペース化しているように感じられた。
あれから5年が経ち、最近(2017年12月)もう一度この場所を見に行ってみた。
新しくできた庭園の様子を見るためだ。
ところが…、
まだ完成していなかった。
さすがに5年が経過しているので、できているだろうと考えていたのが甘かった。
もともとここは、人通りの少ない寂しい場所にある。よほど話題性のある施設でない限り、再開発が後回しにされるのは当然ともいえる。
勝手にバラ園やハーブ園的なものを想像していたのだが、なんとなく「和」っぽい庭園になりそうだ。
すでに常緑樹の苗が植えられ、手前の鉢にはこれから植えられるであろう竹が用意されている。
しかも、ラクダスペース時代の低木が植えられた(未処理の)まま、植樹が進められているのだ。
5年前に見た土の掘り起こしは、いったい何だったのだろうか。
もちろん、すっかり色あせた野口雨情の木板も残されたままである。
今後、新しい草花やその他の庭園素材(石や噴水など)が加えられるのかもしれないが、このペースだと完成はまだまだ先になりそうだ。
いっそのこと、以前の姿に似せて、芝生広場にベンチ&シンボルツリーくらいでもいいのかもしれない。
ここを見ていると、余ってしまった空間(空き地)の有効利用には、多くの知恵が必要だと改めて感じさせられる。
(no.155 動物園の空き地 / 東京都武蔵野市)